ドミニカ共和国レポート

臨床運動障害研究会スタッフの清水康弘が、理学療法士として2012年9月より(2年間)ドミニカ共和国に赴任しました。
青年海外協力隊では、どのような面接・語学研修を経て海外へ飛び立つのか?また、現地でどのような活動を展開するのかをレポートさせて頂きます。
少しでも同じ目標を持たれた先生方のご参考になれば幸いです。

レポート21 ¡Feliz año nuevo!

平成26年1月30日

新年、明けましておめでとうございます。
今年は協力隊最終年です。残りの任期も頑張っていきたいと思います。

最近、街を歩いているとたまに歩道に車椅子用のスロープを見かけるようになりました。障害者やお年寄りに配慮したイイことだと思います。でもドミニカ共和国では車の運転がかなり乱暴で、道路を横断する時は常に危険が伴います。車両同士が強引な割り込みをするため、車同士が当たったり擦ったりはよくあること。車線以上の車が並走するため、ただでさえ渋滞しているのに、さらに渋滞を引き起こし悪循環となっています。また、車両は右側通行なんですが、目前の信号には関係なく右折は可能となっています。車椅子は運転手の目線からは下の死角に入るため、本当に危険です。上記もあってか、不名誉なことに昨年度ドミニカ共和国の交通事故死亡率が世界でNo.1だったそうです。私の派遣先にも、交通事故が原因による脊損、切断、骨折などの患者がたくさんRHに来ています。思いがけない事故により、多くの人達の人生が変わってしまいます。スロープを増えているところを見ると、「安全」に目を向けてきているのだと思います。しかし、根本である道路交通法や運転手自体の認識を変えていく必要があると思います。

JICAボランティアは、派遣前に派遣先がどういった活動を期待しているのかといった「要望調査票」というものが渡されています。私の要望調査票には、同僚に対しての技術指導や他部署との連携等の記載がありました。私自身も知識・技術共にまだまだ未熟です。今まで勉強して得てきた知識と、派遣後も勉強しながら頑張っていこうと考えていました。

要望調査票を目安にして活動するのですが、実際に現場で働いていると他にも問題点が見えてきます。私が派遣されてまず驚いたのが、術後の関節があまりにも曲がらない・伸びない、また二次障害まで発生しているということでした。何故なのか?その都度、X-P等を見て話を聞いていると、術後・受傷後からRHを始めるまでにかなりの時間が経っていて、すでに拘縮していることが原因でした。そして多くのptが、痛いから安静にして動かしてなかったということでした。「何故もっと早くRHに来なかったのか?」との問いに、「知らなかった」、「Dr.が何も言わなかった」という返答が返ってきました。確かに知識・技術指導といった活動は大切だと思います。しかし、このような状況で○○法のような技術指導だけが必要なのか、もっと根本的なところに問題があるのではないかと思い、「急性期RH普及の必要性」を感じました。

その後、数年前、僕の配属先とは違う施設に配属されていたJOCVが、急性期RHの普及を試みたそうなのですが、あまり上手くいかなかったという話を聞きました。またCPに「ptは何故術後にすぐ来ないのか?」と尋ねたところ、「必要性は解っているけど、私達ではどうしようもない」との返答が返ってきました。

JICAボランティア2年間という限られた時間の中で、以前行ったという活動内容を踏まえて、どのようにアプローチしていくのが効率的なのかを考えました。 まずptに直接伝えるのが1つ。でもRHに来た時にはすでに遅い状況です。であればその手前、opeするDr.や病院に現状と協力を訴え、術前後にDr.からptに早期RHを教えてもらう必要があると思いました。そのためには、Dr.の認識を変えてもらう必要があると思いました。Dr.や病院に話をしていくのに具体的な数字があった方が理解を得やすいと考え、TKAを症例にして、術後からRH開始までの日数、Dr.の指導の有無、術後3か月後の獲得角度、等の統計をとりました。結果、TKA ptの術後からRH開始までの平均日数が約45日、術後にRHを開始するのが遅ければ術後3か月の獲得角度が悪くなる、といった統計がとれました。そしてDr.から自宅での指導が無ければ、極端に獲得角度は悪くなっていました。

このデータをまとめてプレゼンを作り、まず配属先のDirectorとDr.診療部長に現状訴えと広報協力をお願いしました。診療部長は元整形外科医。Dr.は以前から現状を理解していて、横のつながりを使い、現状と早期RHの促しを訴えていたそうです。しかし、ドミニカ共和国では整形Dr.とRH Dr.の仲があまり良くないらしく、思ったように進んでいないとのこと。でも僕の目の前に現実に困っているptがたくさんいるのですから、仲が良い悪いは知ったこっちゃありません。Directorは「解ってはいたけれど、今までは触れてこなかった事。しかし実際に数字で見て必要性が解った」と協力を約束してくれました。 いちセラピスト、ましてや外国人がDr.に対して意見を言っていくのはなかなか大変です。現在、どのように広報していくのか、いろいろと方法を模索しながら活動しています。

 

  

レポート20 師走

平成25年12月30日

2013年の瀬です。ドミニカ共和国で迎える最後のクリスマス&年越しです。1年経つのがあっという間に感じます。

配属先では今年はクラブを貸し切ってのクリスマス会が開催されました。朝は通常通り仕事が始まり10時で終了。片づけて移動して、昼前からクリスマス会が開始して7時間ぶっ通し。飲んで食べて踊ってで、さすがに疲れました(^^;) でも任期中最後のクリスマス会は、昨年とは違って顔見知りも増えていたので楽しいものでした。80歳を軽く超えてる会長や、車椅子のスタッフが同僚と一緒に踊ってる姿は、見ていてとてもイイものでした。本当に踊ることが好きな国民です。

 

ドミニカ共和国は野球が人気があります。今年のWorld Baseball Classicの優勝国ですからね。近年、大リーグ各球団施設も多く建設されており、多くの若者がプロ選手を夢見て頑張っているそうです。現在、ドミニカ共和国ではウインターリーグの真っ最中。近年はここで活躍して日本のスカウトの目に留まり、日本の球団に所属して好成績を残す選手も増えています。そして逆に毎年日本から武者修行に来る選手もいます。今年はsoftbank Howksから岩崎選手が参加しています。僕は今シーズン岩崎選手の所属しているAguilas Cibaenas戦を2試合観戦に行きましたが、残念ながら出場している試合を観戦することは出来ませんでした。

 

またドミニカ共和国には広島東洋カープのアカデミーがあり、日本からスタッフが来て働いています。他にも商社で働く人、個人的にドミニカ共和国に来て頑張っている人もいます。そして何より、ドミニカ共和国には移住し頑張ってきて日本人という基盤を築いてきてくれた日系移民の方々もいます。

 

日本とは地球の真裏にある小さな国ですが、多くの日本人がいろんな分野で頑張っています。僕も残り任期の9ヶ月間、悔いのないように頑張っていきたいと思います。

レポート19 継続するために

平成25年11月30日

カルテが始まって1ヶ月が過ぎました。同僚が、以前相談された症例についてしばらく経って「あれから15°も曲がったのよ」と報告してきました。日本だと何気ない会話かもしれないですが、この国で実際の角度の変化を交えて話するのはあまりないことです。今までは「mejorando = 良くなっている」って具体的な変化を示す言葉はなく、抽象的な言葉だけやったんですけどね。カルテは若いセラピストは積極的に協力してくれています。古株のセラピストも皆とはいかないものの、ずいぶん協力してくれています。ドミ共人はプライドが高く、なかなか人に物事を尋ねない人種です。ひょっとしてゴニオメーターの使い方がしっかり解らないのではないかと思い、ROM計測表を作成して配布しました。そうしたら計測方法をセラピスト同士で確認しあったり、ゴニオメーターの細かい数字を読んでたりしてくれています。でもあるセラピストから、冗談交じりに「仕事が増えたやないの」と言われました。日本でもそうだと思うのですが、新人には1つの仕事としてすんなり受け入れられる物でも、今までいた人にとっては+αの仕事になってしまうため、皆に受け入れてもらうまで時間がかかると思っています。
 

今月は7月に実施して以来、延ばしに延ばされまくった勉強会を実施しました。こちらが日にちを提案しても「その日は無理」、「この日にしましょう」と相手側から指定してきても直前で中止になったり。。。。先月、Dr.診療部長が主になってADRスタッフ相手に勉強会が実施されました。その勢いを駆り、「僕も参加したい人だけ相手に細々と勉強会を実施します」ってTF部長に進言して了承を得たので、食堂を会場にして日にちを決めて張り出しました。そしたら、CPが「何で食堂みたいな狭いとこでするの?会議室を借りるからもっと大人数に対してやってよ」ってことで、あれよあれよという間に決まりました。いや、、、、だから、、、、前からそう言うてましたやん、、、、でも、まぁ結果オーライ。時には強引に事を進めることも大切ですね。勉強会は勤務時間内で行うため、患者さんを診る人もいて全員参加とはいかないですが、学生も交えて20人程参加してくれました。

 

僕は勉強会の方法を、「僕がパワポ作成→休憩時間、一人の同僚に説明して教えながら文章(スペイン語)を修正→同僚が全体に対してプレゼン」という形をとってます。そうすることで、その同僚は「説明時に勉強になる+全体に対してプレゼンするため自分自身で再度勉強する=理解度がさらに向上する」と思ったからです。僕が帰国後もその同僚に尋ねれば、なんとかなるんじゃないかということ、パワポを渡しておけば再度プレゼンも実施可能じゃないかという思いがあります。当然、僕も復習になりますし、スペイン語の勉強になりますしね。

今回は、「ADLを考えよう」というテーマにしました。こちらのセラピストはDr.からの指示が間違っているのか合っているのか考えることもなく、ただただその指示通りのみ行うということが通常です。

整形疾患なら、時期が経ち過ぎている関節に対して、物療&筋トレしてグイッと曲げる、で終わり。だから、そのptのX-pはチェックしたの?その関節状態でさらに曲がるの?ADLの何が出来なくて困ってるの? じゃあ、「道具使用」を含めた「代償」という方法もあるんじゃないか?としました。

脳血管疾患なら、ストレッチ→歩行器で立つor歩く、その他は全介助、で終わり。だから、そのptは立てるのに移乗に介助がいるの?何故bed上動作は全介助なの? じゃあ、こういった「方法」、「代償」や「装具」を使用してみるのはどうか?としました。

違った種類の症例を5つ程あげて行いました。今回の勉強会を行った1つの目的に、カルテのプレゼンをしてからずいぶん時間が経ってしまったため、再度カルテ記入の促しの意図も含まれています。先程あげた整形疾患の「時間が経ち過ぎてる関節」は変化があるのか「ROM-t」を書きましょう!脳血管疾患の「その他は全介助」で生活はどう行っているのか「基本動作、Barthel index」を書きましょう!そして最初のRHと最後のRHではどこがどう変わったのか、ptの変化を見ましょう!何を目標にしてRHをしていますか?といった具合です。

私も日本で働いている時に、新しい書類が増えると慣れないのもあって、ついつい忘れたりしていたことを思い出します。今、彼らにとってカルテ記載は慣れないものですし、ただ仕事の1つとして捉えているのがほとんどだと思います。でも上記のように意義を理解してもらい、「やらされているもの」から「やる必要があるもの」に意識が変化してくれば、絶えることなく残っていくのではないかと思います。ほんの少しでもドミニカ共和国のリハビリが発展するように、カルテだけではなく、他の事においても同様、僕が離れた後でも残っていくような活動を今後もしていきたいと思います。

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